照明監督とわたり合うのも、俳優が自信をもってカメラの前に立てるようにするためだ。「俳優はプライドが高いし、自分の美醜に対する意識も相当なもの。たとえばホームレスの役だとしても、初めから汚してしまうのは良くない。私はナチュラルな状態の顔を一度つくってから、汚しを入れていました。すると俳優も役に入り込める。どんなときもきれいでありたいと思っている、その気持ちを大切にしたいのです」映画やテレビの制作現場では撮影監督や照明監督の立場が強い。キャリアを積んで発言権を得たのかと聞くと、「昔から言いたいように言っていた」と笑う。「女優がよく言うのは、心が安定する光があるということ。この照明なら自分は美しく映っていると画面を見なくてもわかるのですね。逆に、これは違うという照明のときは表情がかげります。それを察したら私はすぐに照明監督のもとへ走り、『もっときれいに』などと言って、彼女たちの気持ちを代わりに伝える。照明だけでもメイクだけでもなく、連携してお互いを補い合い、それぞれの限界を超えるのです」「造顔マッサージ」も、メイクの限界を感じたことから研究が始まった。「その人本来の顔の美しさを引き出すために、肌のたるみなどの余分なものを取り去ればいいと考えました。そうすれば、おのずとメイクの量も少なくて済むようになります」。マッサージは俳優にも施すが、「マッサージすると顔ががらりと変わるのです。だから、初めに撮ったシーンと後のほうで撮ったシーンとでは、俳優の顔が違って見えるなんてこともありました(笑)」。