丹東では前回通った北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べた。鴨緑江に面した平壌松侍園という店だった。そこには金日成のバッジをつけた女性たちが働いていた。彼女たちを間近で見ると、その美しさに足許を掬われそうになる。ファンデーションなど塗らなくても、シミひとつない木目の細かい肌。重労働など一回もしたことがないような細い指……。僕はその姿を見ると、脱北者が訴える北朝鮮の惨状や目の前の鴨緑江の向こうに見渡すことができる、死んだように静まり返る新義州の町との折り合いかつかなくなる。
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選ばれた喜び組とやらに接しているだけなのかもしれないが、北朝鮮という国は、日本人が思い描くほど悲惨ではないのではないかと考え込んでしまうのである。前回、この店を訪ねたときに働いていた女性もいた。唸ってしまうほど歌のうまい女性だった。この店は、夜になると、彼女らの歌が聞けるのだった。できれば今晩、丹東に泊まり、そんなことをうつら、うつらと川の向こうに広がる国のことを考えてみたかったのだが、今回の旅は時間がなかった。僕らはこの先に、その距離を測ってみたくもない道のりを残しているのだ。瀋陽に出ることにした。